ヒステリックラバー
「私は自分のために直矢さんを利用しました。こんな私でもずっと愛してくれますか?」
目の前の直矢さんが涙で霞む。人前なのを気にしないかのように直矢さんは私を抱き締めた。
「美優の幸せのために存分に僕を利用してください。僕は決してあなたを裏切りません」
直矢さんの腰に腕を回して抱き合った。周りを歩く人の視線が痛い。
「僕の愛がこれでもまだ足りないから美優は勘違いするのですね」
「直矢さんがこれ以上私を愛そうとしたら四六時中抱きつかれそうで困ります」
「重たい男上等と言ってくれたのにですか?」
直矢さんが拗ねた声を出すから私は笑う。
本当に、これ以上溺愛されたら常に直矢さんの体温を求めてしまう気がして怖い。
「愛しています」
耳元で囁かれる想いに体が震え足に力が入らない。直矢さんは私を一層強く抱き締めた。
「私も……直矢さんを愛しています」
そう言った瞬間唇を塞がれた。
もう周りの目など気にならない。角度を変えて何度も何度もキスを交わした。
直矢さんの大きくて重たい愛が心地いい。私が愛情を注いだ分以上に直矢さんは愛情を返してくれる。
もうずっと私の手を離してくれなそうなこの人に、私も変わらない愛を注いでいきたい。
◇◇◇◇◇
「これが直矢さんの新居ですか……」
「もう少し広い部屋でもよかったかな?」
「いや……ここで十分だと思います」
直矢さんが引っ越し先の契約を済ませたというので新居を見に行くと、そこはオフィス街にそびえ建つタワーマンションだった。