ヒステリックラバー
「本当はもっと高い階の部屋にしたかったんだけど、僕の予算では無理だったよ」
「ここに住めるだけでもすごいと思います……」
3LDKで、リビングの面積だけでも私のマンションの部屋よりも広い。直矢さんの一人暮らしにはあまりにも広すぎる。
外観からエントランスホール、各階の廊下も綺麗で品があり、ホテルのようだ。この部屋もいるだけで場違いな気がしてしまう。
契約をしてすぐに大型の家具を運び入れた直矢さんの休日は引っ越しの準備で忙しくしている。このリビングにも新調したソファーとテレビ台、ダイニングテーブルが置いてある。
「少しずつ家具も揃えないと」
恐ろしいほど早く身の回りのものを揃えていく。その財力が羨ましくもあり呆れもする。
私はソファーに座った。フカフカで座り心地がいいソファーはこのままここで寝てしまえそうなほどだ。
直矢さんはソファーの端に腰かけた。
「ペットも飼えるそうです。近くに大きな公園もありますし、申し分ないですね」
「ついに犬嫌いを克服したんですか?」
「まだですが頑張ります。美優が大型犬を飼いたいと言っていたでしょう?」
「え……」
「この部屋は美優と住むことを考えて契約したんですから、美優の好きな犬種をお迎えしましょう」