ヒステリックラバー
２　戸惑う女、決心した男
◇◇◇◇◇



毎年２月の中旬には社員旅行が計画されている。楽しみにしている社員がいるとは思えないこの会社行事に毎年私もうんざりしている。

土曜日の朝に会社のビルの前に集合して大型バスで移動する。今年は植物園に行き工場でガラス細工作りをやった。

「ほんと、専務こういうの好きだよね」

特別興味もあるわけじゃない旅行の内容に先輩が溜め息混じりに呟く。

毎年社員旅行の行き先と観光内容は専務が決めている。退屈なわけではないけれど会社の同僚とわざわざ土日の休みを潰してまでも行きたいところではない。

ガラス工房の裏から見える景色を写真に撮っていた私も先輩に合わせて苦笑いする。景色を撮ってはみたものの、この写真を正広に送っても反応に困るだろうと思って保存するだけに止める。

旅館に到着して温泉に入った。事前に聞いていた通り温泉は浴場もお洒落で眺めも最高だった。
浴衣に着替え宴会場に移動し、宴会の前に幹部の挨拶を終えると静かだった会場が徐々に盛り上がってくる。その中で人一倍大声で盛り上がっているのは私とコンビを組んでいる山本さんだ。瓶ビール片手にテーブルをあっちこっち移動し、先々で盛り上がる山本さんに私は呆れた。

「もう……」

あれだけノリが良く仕事もできてルックスも良いのだから彼の周りには常に人がいた。今日の旅行もサボりそうなところをちゃんと出席して盛り上げている。

「山本さん、ほんと軽いですよね」

田中さんと隣同士で座りながらはしゃぐ山本さんを見ていた。

「山本さんって大学生の彼女がいるって本当ですか？」

私にそう聞くから「いるけどもう学生じゃないよ」と答えた。

「駅にカフェあるでしょ？　そこでバイトしてた子だよ。大学は去年か一昨年卒業してもう社会人になったんじゃないかな？」

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