ヒステリックラバー

「嬉しい!」

笑顔を正広に向けて手の中のマカロンの箱を見た。忘れずにお礼をしてくれた正広の気持ちが嬉しい。これは私のことを思ってくれたプレゼントだから。

「正広はホワイトデーなんて忘れてると思ってた」

「忘れないだろ普通は」

「はは……そうだね……」

忘れたこともあったよ、なんて言葉は飲み込んだ。過去私の誕生日だって数か月後に思い出したことがあったのだ。だからホワイトデーのお返しをくれるなんて正広にしては珍しい。二人の関係の修復を期待してもいいということだ。

そうして武藤さんからもホワイトデーのプレゼントをもらったことを思い出した。
カバンから出したそれは正広からのマカロンと同じ赤いリボンがかけられたピンクの包み。正広の箱よりも大きくて重さもあった。中を開けると色とりどりのマカロンが箱に詰められていた。正広からのマカロンよりもたくさん入っている。

「なにそれ?」

正広は私が持っている箱の中を覗き込んできたから慌てて隠そうとしたけれどすでに正広に見られてしまった。

「あ……今日先輩にホワイトデーのお返しをもらったの。私が義理であげた人から」

正広に変に思われないように『義理で』を強調した。同じマカロンで、しかも正広の箱よりも大きいなんて知られたくなかったのに。

「ふーん。うまそ。一個ちょうだい」

「いいけど、正広がくれたものと同じなんだ……」

「あー、そうだっけ。まあいいよ」

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