ヒステリックラバー
買ってきた下着は袋に入れたまま洗面所に隠すように置いた。1度洗濯してから身につけようかと思ったけれど、今夜寝る前に身につけて正広に見てほしい、なんて成り行きを想像して心が踊る。
鍋に入れる野菜を切っていたときに正広はやってきた。
この間会った時よりも顎がすっきりして肩や腕が細くなった気がした。顔も疲れが滲み出ていて仕事が忙しいのかと心配になった。
「正広、大丈夫?」
「ああ……」
靴を脱いで玄関にカバンを置いた正広はいつも以上に口数が少ない。
「もうちょっと待ってて。今野菜切っちゃうから」
少しでも正広がリラックスできるように私は張り切っていた。
やはり疲れているのだろう正広は缶ビールを2本飲んだだけで床に寝転がったまま動こうとしなかった。
「泊まってくでしょ? お風呂入る?」
「うーん……まだもうちょっと……動けない」
「そう……なら私先に入るよ?」
「うん……」
食器を片付けて浴槽にお湯を張ると寝転がったままの正広を置いて浴室に入った。
正広はお酒に弱いわけじゃない。それなのに前回も今日もあんなに酔っているのは心配になる。明日は昼までゆっくり寝かせてあげるのもいいかもしれない。湯船に浸かりながらそうぼんやり考えた。
お風呂から出るとリビングからテレビの音と正広の笑い声が聞こえてきた。顔だけ出してリビングを見ると起き上がった正広はお笑い番組を見て笑っている。あのまま寝てしまうのではと思ったけれど、どうやら酔いは覚めたようだ。