ヒステリックラバー

そうなると自然と期待してしまう。今夜正広はこのまま家に泊まっていくだろう。私の足元にはいつもと違う新しい下着がある。

屈んで買い物袋から下着を取り出して身につけた。鏡には見慣れない下着をつけた自分が映る。ピンク色でレースが付いたブラジャーに、同じくレースがあしらわれた紐ショーツ。下着の上からタオル地のパーカーを着てショートパンツをはいた。
恥ずかしいけれど期待に胸が高鳴るのを自分では止められない。

「お風呂いいよ」

正広は視線をテレビから私に向けると、すぐにまたテレビを向いた。

「そういえば俺スウェット忘れたわ」

「あ、そうなんだ」

確かに正広はスーツで来たままご飯を食べて横になっていた。荷物も会社のカバンしか見当たらない。まるで私の家に長居するつもりはなかったかのような最低限の荷物だ。

「どうしよっか……正広の着れるものはうちにはないし……」

滅多に来ないから着替えの用意なんてない。一人暮らしの私の家には男性用の服はもちろんないのだ。

「…………」

返事をすることもなく正広はテレビを見ている。画面には最近テレビでよく見るようになったお笑い芸人が漫才をしていた。
立ったままだった私は返事をしない正広の横に座った。それは顔を少しでも動かせば私の太ももが見える距離だ。手を少しでもずらしたら正広は私に触れてしまえる。

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