ヒステリックラバー

「………」

まだ武藤さんの担当になってからの仕事の処理ペースがつかめずに日程表の作成が遅くなってしまったのは私の責任だ。それなのに先方に送信するはずのメールも送り忘れてしまうなんて自分でも呆れてしまう。

「申し訳ありませんでした……気をつけます」

「お願いします。メールはすぐに送ってください」

そう冷たく言うと武藤さんはパソコンに向かった。私は悔しくて涙が出そうになるのを堪えて目の前の仕事に取りかかった。
私が悪い。体調管理もできずプライベートの悩みを仕事にも響かせたのだ。田中さんから私に引き継いだ途端にミスを連発では怒られて当然。将来を期待されている武藤さんには私をサポートにと会社からも言われていたのに足を引っ張ってしまった。










次の日、私はついに高熱が出て出勤することができなくなってしまった。会社に連絡をして武藤さんの社用の携帯電話にもメールを送った。『ゆっくり休んでください』と当たり障りのない返信に一層申し訳なさが増した。

私では武藤さんと仕事をするのは無理だ。この人とは一定の距離をおいておくのがよかったのだ。武藤さんの気持ちを知りたくはなかったし、異動もしたくなかった。正広とは順調に付き合い続けたかったし、将来も真剣に考えてほしかった。

何もかも私の思い通りにはならなくて、何もできないことが苛立たしい。



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