ヒステリックラバー
「私を抱けなかった、から、私よりも……その人がす、好きだって、再確認しちゃったんだ?」
言葉が途切れ途切れになる。会話を続けようと必死だ。
「私が……嫌いになった?」
「違う。美優以上に大切な人ができたんだ」
正広ははっきり告げた。涙が頬を伝う。私を嫌いになってくれた方がよかった。その方が正広を嫌いになれたのに。
「ごめん……美優ごめん」
正広の謝罪が聞きたいわけじゃない。切ない声で「美優」と呼んでほしいわけじゃない。
「無理……急に別れようだなんて……受け入れらんないっ……」
声が震える。もう平静を保つのが難しい。
5年なのだ。正広と付き合って5年の思い出や安心感を急に手放すなんて無理だ。何度二人の幸せな未来の想像をしただろう。私は正広と結婚したかった。
「うん……急だよな。ごめん」
「無理っ……嫌だよ正広……」
どこの誰かも知らない女に正広の気持ちが向いてしまった。受け入れるのは簡単じゃない。この気持ちを抱えたままでは何もできない。離れないでと願うことしかできないのだ。
「美優、俺を恨んでいいから」
この言葉に私は鼻で笑った。今更正広を恨んだって意味なんてないのに。
「正広を恨んでも私のそばにはいてくれないんでしょう?」