ヒステリックラバー
◇◇◇◇◇
あれから武藤さんは何事もなかったように私に接した。恐れていた四六時中抱きつかれるという状況にはならずにほっとしている。さすがに他の社員のいる仕事中にそんなバカなことをするとは思っていないけれど、最近の武藤さんならやりかねないのではと内心恐れている。
私は武藤さんへの態度を固くしていた。何度も抱き締められて強引にキスをされれば警戒して避けたくなるのも無理はないと思う。それなのに武藤さんは私が避けるのを面白がっているようで、わざと無意味なことでも話しかけてくるのだ。
「明日は古明橋の視察に行ってきます」
「え、明日武藤さん出勤されるんですか?」
「はい。視察に行けるのは明日しかないので」
明日は土曜日で会社は休業日のはずだ。休日出勤する社員もいなくはないけれど、営業部の社員も基本的には休みだ。
「じゃあ私も資料を作成しなきゃいけないので出勤します」
「そんな必要ないです。戸田さんは休んでください」
「武藤さんが出勤してるのに私が休むことはできません」
引き下がらない私に武藤さんはしばらく考えたあと視線を私に合わせた。
「では一緒にいきませんか?」
「え?」
「明日、古明橋に一緒に行ってください」
予想外の申し出に言葉を失った。武藤さんと一緒に出掛ける……たとえ仕事だとしても抵抗がある。以前山本さんと外出したことはあったけれど、今の武藤さんとは遠慮したい。
あれから武藤さんは何事もなかったように私に接した。恐れていた四六時中抱きつかれるという状況にはならずにほっとしている。さすがに他の社員のいる仕事中にそんなバカなことをするとは思っていないけれど、最近の武藤さんならやりかねないのではと内心恐れている。
私は武藤さんへの態度を固くしていた。何度も抱き締められて強引にキスをされれば警戒して避けたくなるのも無理はないと思う。それなのに武藤さんは私が避けるのを面白がっているようで、わざと無意味なことでも話しかけてくるのだ。
「明日は古明橋の視察に行ってきます」
「え、明日武藤さん出勤されるんですか?」
「はい。視察に行けるのは明日しかないので」
明日は土曜日で会社は休業日のはずだ。休日出勤する社員もいなくはないけれど、営業部の社員も基本的には休みだ。
「じゃあ私も資料を作成しなきゃいけないので出勤します」
「そんな必要ないです。戸田さんは休んでください」
「武藤さんが出勤してるのに私が休むことはできません」
引き下がらない私に武藤さんはしばらく考えたあと視線を私に合わせた。
「では一緒にいきませんか?」
「え?」
「明日、古明橋に一緒に行ってください」
予想外の申し出に言葉を失った。武藤さんと一緒に出掛ける……たとえ仕事だとしても抵抗がある。以前山本さんと外出したことはあったけれど、今の武藤さんとは遠慮したい。