ヒステリックラバー
しばらく走って車は古明橋公園の駐車場に入った。
オフィス街の中にある古明橋公園は季節の植物が楽しめるのはもちろん、噴水広場やサイクリングコース、ドッグランがあり、会社員が休憩に訪れたり休日は親子連れで賑わう有名な公園だ。野外ステージではアーティストがライブを行うこともある。
「えーっと……噴水広場を抜けていきましょう」
武藤さんは公園の地図を見ながら歩き出したので私はその後ろからついていく。
「当日は野外ステージでヒーローショーをやります。そのあと地元アイドルのライブですが、その際に使う花のアーチをここら辺に設置します」
武藤さんは地図を見ながら広場をくるくると回る。
「ああ、でもここにアーチを作ると出入り口が狭くなるな……そうするとアーチの大きさを変えるか場所を移動しないと……でも……」
地図と地面を見ながらひとり言を呟く武藤さんがおかしい。いつもはオフィスでパソコンと向き合う姿しか見ないのだ。自分の足で歩いて仕事をする武藤さんは新鮮だ。
私のお腹が小さく鳴って咄嗟にお腹に手を当てた。空腹でお腹が鳴ったのを武藤さんには聞かれなかったようでほっとする。腕時計に目をやるとそろそろ昼食にしてもいい時間だ。
「お昼にしますか?」
腕時計を見る私に武藤さんが声をかけた。