ひめごと
生花の白百合を贅沢に使って、ブライダルベールを白百合の隙間に差し込んだ。
明日、式が終わるまで、綺麗に咲いていてくれるといいのだけど。
それだけが気がかりだ。
「ブライダルベール、なんて種類の花があるのね。知らなかった」
「なんかロマンチックでしょ。あんたが結婚するって言った時、すぐにその花を思い出したのよね」
花というにはあまりに小さい、カスミ草ほどの白い花だが、グリーンの葉をたっぷりと背景に背負うその花はとても可憐で私は好きだ。
「明日一日、ちゃんともたせて見せるから安心してよ」
「うん、ありがとう」
「寂しくなるなー」
大学を出て、二人で上京して部屋も一緒に借りた。
五年一緒に住んだこの部屋は、明日から私一人になってしまう。
「ちょ、寂しいからたまには遊びに来てよ」
「当たり前だよ!!」
「いきなり一人だなんて、まじでへこむ!」
「彼氏と一緒に住んだら?」
「いないって知ってるくせにー!!」
手近にあったクッションを彼女の顔にむけて放り投げると、咲子は避けもせずに顔面でキャッチする。