ひめごと

ラグの上に横向きに寝そべる咲子の背中側で、私もうつらうつらとしていたのだけれど。



「咲子?」



飲んで燥いで、お酒に弱い咲子はすっかり熟睡してしまったようだった。



「風邪ひくよ」



彼女のサラサラの後ろ髪を見ながら、そう声をかけたけれど、返事は変わらず規則的な寝息だけだった。


上半身を起き上がらせて、彼女の顔を覗き込む。
まだお酒の名残で赤く染まっている肌とふわりと香るアルコールの匂い。


何度声をかけても睫毛も震えない。



「咲子」



高校の頃、一度だけ戯れに触れた唇が忘れられないと言ったら
あなたは私を気持ち悪いと思うだろうか。


最後まで無防備な貴女が明日いなくなると思うと
少しほっとする。


だけど、最後だから。
これが、最後だから。


だからこそ、抗えない衝動に襲われる。

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