ひめごと

その唇に、もう一度だけ重ねたい。


でも、だめ。
目を覚ますに決まってる。


その、柔らかな頬になら?


だめだ。
万一目を覚ましたら。


咲子の視界にそんな私の姿を映してはいけない。



咲子。



声に成らない、唇だけで名前を呼んだ。
横たわる彼女の背中側に静かに寝そべり寄り添うと、細く長い髪を手に取った。



咲子。



バレたら最後。
この想いは、知られてはいけない。


静かに、静かに持ち上げて
その髪の先にキスをした。


艶やかな感触が、唇に残る。
鼻孔を擽る、シャンプーの香りは私と同じ。


明日からは、別の香りに包まれる
貴女を最後まで親友として見送るために


こんな私に、気が付かないで。

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