きっかけは
うん、清々しい程に全く
思った事もない
ある意味、情けない
女と二人で飲みに行ってるくせに………
前に仕事の先輩に言われた事がある
「お前、山城さんと仲良いけどなんもないの?」と
一人や二人、一度や二度じゃない
よく言われる
本当になんもないですよ、と答えれば
「あんないい女と一緒にいてなんもないのか?!
一度は抱いてみたいわ」なんて言われたっけ
その時もわけのわからない感情が渦巻いた
それもわからない
「高梨にも言われたんです
俺は恋愛初心者だって
好きとか、あまりそういう感情がわからないのかもしれません」
「ほー、あの兄ちゃんか
あの兄ちゃんも姉ちゃんの事好きだったんじゃないのか?」
「え?なんで?」
店長はエスパーか?
俺は三年一緒にいてわかんなかったぞ
「姉ちゃんに対して優しい顔してたからな」
「…………」
「もうすぐ結婚するんだろ?」
「え?」
「この前、挨拶に来たよ」
わざわざ居酒屋の店長に報告?挨拶?
この店長、何者………
俺なんかより知ってるんじゃ……
「デレデレ絞まりないだらしない顔してたな」
「……そうですか、良かった」
ちゃんと、可憐の事吹っ切ったんだな
「次は兄ちゃんの番だな?」
「え………」
「兄ちゃんだって、これから恋愛して、結婚するだろ?」
「俺が結婚なんて想像つきません」