桜の下できみを待つ
君の声
_うちの両親は仲が悪くてね。
そんな、最近ではそう珍しくもなんとも無い、
つまらない、私の話。
でも、チハルはそんな私の話を真剣に聞いてくれた。
優しいなぁ、なんて。
そんな事考えて。
「じゃあ、ネオちゃんは今
お家を飛び出してきちゃったんだ?」
「う……そうなるね……」
何となくそれは言いたくなくて、
家を飛び出してきた、とは言わなかったのに。
「すごいね、チハル。何でわかったの」
「ネオちゃんの顔にお家飛び出してきました、
って書いてあるもん」
「はぁ?」
「うわ、怖いよ。冗談冗談。
でもネオちゃん、僕に話してくれてありがとうね」
「いや、こちらこそ。心軽くなった」
それはよかった、と爽やかに笑う君と、
その隣で今にも死にそうな顔をしてる私。
……周りから見たら、どう見えるんだろうね、私達。
君のそのキラキラとした笑顔に近づきたくて。
君に触れてみたくて。
「ネオちゃん、どうした?」
私の両手は自然と。
君の両頬に。
「…………何も無い」
「泣いてるよ」
「放っといて」
「嫌だ」
そう言って君は私の顔を包み込んで、
私の目からこぼれ落ちる花びらに触れた。
君はふわりと笑って。
「大丈夫、君はこんなにも綺麗だ」
またそんな適当な事言うんだ。