桜の下できみを待つ


「ネオちゃんってさ」



私の涙も収まった頃。
家を出た時には全く見えてなかった星が
ちらほらと見えるようになっていた。



「何?」
「クールかと思ったら意外にすぐ泣くよね」
「はぁ?うるさいな」
「ほら、口は悪いのに」



なっ……チハルのくせにムカつく。
ちょっと頭に来たので無視してやろうと思ったら。




「え?怒った?
ごめんごめん、そんなつもりじゃなくて」




そしてチハルはちょっと照れたようにして、




「……かわいい、って言いたかったんだ」
「…………!?」




急にそんなこと言うから心臓に悪い。
なんとか話を逸らそうと、頭を回転させていると。


ぽつり、と。





「いいなぁ」





「え?」




思わずチハルの顔を見ると。
ほらまたあの顔。
初めてここであった時の顔。




「チハルは泣かないの?」





すると、君は顔をすこし切なそうにして。





「泣かないよ」







そうじゃないでしょ。
君がそんな顔をして言うから。





「泣けないの?」





そう、聞いてしまった。





君の綺麗な茶色の瞳が揺れる。






途端に風が吹いて。









「大丈夫だよ」








桜のシャワーを浴びながら、君が切なく微笑んでそんな事言うから。





私はまた、泣きそうになった。


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