桜の下できみを待つ
あれから一週間。
私たちはあの桜並木で毎日会っている。


そう約束したってわけじゃないけど、
どちらともなく、会っていた。



「この関係って何なんだろう」
「なんか言った?」
「うわ!チハル!びっくりさせないでよ!」



今日も例の場所でチハルを待っていると
目の前にいつの間にかとても綺麗な顔。



「ふふっ、ネオちゃんでも独り言言うんだね」
「当たり前でしょ!私をなんだと思ってるの」
「美人」



チハルがあまりにも真面目な顔で言うから
私は思わずむせてしまった。



「あのね、チハル」
「なに」



あぁ、ため息が出る。
何でこいつはあんなことをさらっと言えるんだろう。



「かわいいとか、そんな事は本気でそう思う子にしか言っちゃ駄目なんだよ」
「じゃあ、いいじゃん。
僕はネオちゃんを可愛いと思う」




こいつは盲目なのか。
うん、きっとそうだ。それか精神に異常がある。
今すぐ病院に連れていった方がいい。
病院に電話をしようと携帯を取り出した時。


「わぁ、それ携帯?」
「え、そうだけど……」
「すごい!ちょっと見せて」
「いいけど……」


私が携帯を渡すとチハルは目をキラキラとさせて、
大きな目をもっと大きく見開いて携帯のあちこちを触っている。


いやいや、まさか。
だって今の時代よ?うん。そんなことはないはず。


「チハル、あんたもしかして……」
「……ん?あ、僕携帯持ってないんだよね」



ビンゴ。




「何で?家が貧乏?」
「ネオちゃん、それは失礼なんだよ。違うけど」
「じゃあ何で?」
「連絡をとる必要がないから、かな」
「え?親がいないの?」
「ふふっ、違うよ。僕の両親はどちらとも健在。」



頭の上にたくさんハテナの乗った私を、
チハルは笑って見ていた。



「いつかね、教えてあげる」





「僕の秘密」





この時に私は何かに気づけば良かったのかもしれない。



だって君がいつもどおりに微笑むんだもん。
そんな気づけるわけないでしょう?


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