サムライ君とメガネちゃん
ブツブツ言っているテツ君の声はやがて、

詩吟のような朗々とした低い声となり、辺

りにこだまする

琵琶の音が、聞こえてきそうだ

色々知ってるんだな、この人

さすがの私も、平家物語は知っている

しかし、それも冒頭の有名なフレーズだけ



テツ君の平家物語朗読は、さらに続く

初め、聞き惚れていた私は、そのうち「い

つ終わるんだろう」と不安になってくる

全文は、相当長いはずだ

「あのう、テツ君?」

続く

「テツ、君?」

まだ続く

「テツ君、ってば」

たまらず私はテツ君のTシャツの袖をつか

み、引っ張る

…ハッと我に帰った様子でテツ君は私を見て
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