キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。
「オレはそんなに信用ないか?
オレ達は小さい頃から幼なじみやってきてこんなことで冷める関係だったのか?」
「…こんなことっ…て……っ!」
些細な喧嘩で口を利かなくなったことは何度かある。
でもそれとは話が違う。
妊娠、出産、子育て。
自分の人生を左右する出来事はどんなに信頼し合ってる関係でも崩れるのは一瞬なんだよ。
どんなに好き合っていたあたしと先生との関係だって鈴を妊娠して一瞬で崩れた。
だからこそ話せなかったんだよ。
そう反論しようとしたらすぐに巧の指があたしの唇に触れた。
「……亜沙美に子供がいてもいなくても、オレが亜沙美を好きなことに変わりはない。
オレの長年の片思い、舐めるなよ?
オレは……亜沙美の子供ごと亜沙美を愛したいんだ。
だから一人で苦しむな。これからはオレも一緒に歩いてやる」
「……っ」
あぁ。どうして欲しかった言葉をそうすぐ与えてくれるんだろう。
心がどんどん軽くなっていく。
心の重みを軽くするように目から涙が溢れて止まらない。
もっと早く勇気を振り絞って巧に話せば早く楽になったのかな。
でもいい。
こうして泣いてるあたしを抱き寄せて鈴ごと包み込んでくれるなら。
【side end】