キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。



ブランコに乗って楽しそうな声をあげる鈴が遠くに見える。



美瑚が鈴の背中を押してブランコを漕いでくれている。



ベンチの隣に座る巧を見ると巧はずっと鈴を見つめていた。



なんて切り出せばいいの?



鈴があたしのことをまーと呼んであたしが鈴の母親だってことが分かったはずだ。



美瑚がいきなりだったけどこうして巧に話すチャンスをくれた。



それなのにあたしは「あの子はあたしの子供なんだ」っていう一言が声に出ない。



事実よりも巧をどうやって誤魔化そうかと逃げ道ばかり考えてしまう。



どうやってももう誤魔化せはしないのに。



「……お前に似てるな、鈴ちゃん」


「…え、そ、そう…かな?」



よく言われることを初めて言われたかのように答えてしまった。



いつもなら喜ぶところなのに。


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