この空の下、君と一緒に。
見知らぬ夕焼けが染まった細道の中をついていくと、私の目の前には小さなお墓があった。
「あたしの母親はね、死んだんだ。病気で……」
「……ぇ?」
「当時は貧乏で幼い弟妹の他にも、あたしも所詮子供だったからなぁ。何も、出来なかった……。」
榊、さん……。
「こんなに自分の弱さを恨んだことはなかった。もっと強い人間になりたい。そう思ったよ。だから勉強もして、なめられないように女を捨てて、名門校に入って……。とにかく残された弟と妹のために、必死だった……。」
約束したから、お母さんと。
そう言う彼女の呟きには、強い決心が込められていた。
強くなりたい……。
そんなの、皆同じだった。
「強くなるってことは、権力とか立場とかじゃないよ。強くなるっていうことはね、誰かのために頑張れる人、誰かを大切に思える人のこと。」
「ッ!?」
誰かを……思う?大切に?
誰かのために……頑張る?
何なの、この子。
何言ってるのよ……。そんなの自分が不利になるだけじゃないッ!
「……っそんなの!!弱者と一緒よッ!!誰かのためとか、阿呆らしい……。今の世の中、強者が全てを支配する。そのためには犠牲だって……少なくないわ。」
「そうかもね。不利になるかもしれない。だけど、誰かを守れないなら、そんなの強者でも何でもないよ。」
「なっ……!!!!!」
何なのよ!!!!!
少しでも良い子だと思った私が馬鹿だったッ!!!!!!
「____あたし、もうすぐ死ぬんだ。」
_________ッ……は?
「お母さんがかかった病気と同じ。脳と心臓の……病気。何かじわじわ弱ってくやつらしくてさ!あははっ!やんなっちゃうよね~!!」
正直、やはり私は…………榊 アリスがわからない。
もうすぐ死ぬと言われて、笑う神経が。
「あたし結構神崎さんに憧れてたんだよねー。美人だしスタイルいいし、頭いいし……完璧美少女って感じで。」
「……」
「だから仲良くなれて、嬉しかった!」
「……ッ!!!さ、かきさっ…!」
「だからね、この身体が壊れる前に、触れて欲しいんだ。髪も、頬も、腕も…………何か女子同士なのに変だよね!あはっ」
「っ……」
今だけは、彼女の笑顔が涙に見えた。
「……てよ。触れてよっ……全部。肌を……榊さんに……触れたい…………ッ!」
「……っ神崎、さん……。」
こんなの可笑しいってわかってる。
でもこの感情は嘘じゃないってわかってるから。
私はそっと彼女の頬に手を伸ばした。
思ったよりも白くて柔らかくて……温かくて。
「ふふっ。あたしも、触っていい?」
「……ん。」
「うわぁ。髪の毛ふわふわ!肌もちもち~!」
「……」
「いいなぁ。」
「……」
「神崎さん、アリサとアリスって何だか似てるよね!」
「……うん。」
「あたし今ね、生まれて初めてこの名前で良かったと思ってる。神崎さんが、大好きだから。」
「っ……ぅ、んっ……」
「だから泣かないで?」
そう言って彼女は私の涙を拭った。
そして今までにないくらいの優しい声色と瞳で私を見た。
「……ありがとう。」
「……ッ!ごめっ……ごめんねぇっ……!!あたしっ……恐かったのッ!またあんな地獄の日々が戻ること……!ホントは助けたかった……ッ!だけどっ足が……頭が……真っ白でっ……!!!」
「うん。わかってる。大丈夫だよー!だから、ね?笑った顔、見せてよ……」
そして顔をそっと持ち上げられ、私は唇を重ねられた。
驚いたけれど、何処か安心できた。
触れあう所から、彼女の体温が、鼓動が伝わって……胸を温かくする。
これがもしも、恋ならばきっと……他の人に軽蔑されるかもしれない。
「……んっ。好きだよ……?」
「……うん。私も。」
だけどそれ以上に、彼女が大切だと思える。
残り少ない時間でも精一杯共に生きていきたい。
彼女を守れる……そんな強者に私はなりたい。
愛しい肌が、それを教えてくれた。
「あたしの母親はね、死んだんだ。病気で……」
「……ぇ?」
「当時は貧乏で幼い弟妹の他にも、あたしも所詮子供だったからなぁ。何も、出来なかった……。」
榊、さん……。
「こんなに自分の弱さを恨んだことはなかった。もっと強い人間になりたい。そう思ったよ。だから勉強もして、なめられないように女を捨てて、名門校に入って……。とにかく残された弟と妹のために、必死だった……。」
約束したから、お母さんと。
そう言う彼女の呟きには、強い決心が込められていた。
強くなりたい……。
そんなの、皆同じだった。
「強くなるってことは、権力とか立場とかじゃないよ。強くなるっていうことはね、誰かのために頑張れる人、誰かを大切に思える人のこと。」
「ッ!?」
誰かを……思う?大切に?
誰かのために……頑張る?
何なの、この子。
何言ってるのよ……。そんなの自分が不利になるだけじゃないッ!
「……っそんなの!!弱者と一緒よッ!!誰かのためとか、阿呆らしい……。今の世の中、強者が全てを支配する。そのためには犠牲だって……少なくないわ。」
「そうかもね。不利になるかもしれない。だけど、誰かを守れないなら、そんなの強者でも何でもないよ。」
「なっ……!!!!!」
何なのよ!!!!!
少しでも良い子だと思った私が馬鹿だったッ!!!!!!
「____あたし、もうすぐ死ぬんだ。」
_________ッ……は?
「お母さんがかかった病気と同じ。脳と心臓の……病気。何かじわじわ弱ってくやつらしくてさ!あははっ!やんなっちゃうよね~!!」
正直、やはり私は…………榊 アリスがわからない。
もうすぐ死ぬと言われて、笑う神経が。
「あたし結構神崎さんに憧れてたんだよねー。美人だしスタイルいいし、頭いいし……完璧美少女って感じで。」
「……」
「だから仲良くなれて、嬉しかった!」
「……ッ!!!さ、かきさっ…!」
「だからね、この身体が壊れる前に、触れて欲しいんだ。髪も、頬も、腕も…………何か女子同士なのに変だよね!あはっ」
「っ……」
今だけは、彼女の笑顔が涙に見えた。
「……てよ。触れてよっ……全部。肌を……榊さんに……触れたい…………ッ!」
「……っ神崎、さん……。」
こんなの可笑しいってわかってる。
でもこの感情は嘘じゃないってわかってるから。
私はそっと彼女の頬に手を伸ばした。
思ったよりも白くて柔らかくて……温かくて。
「ふふっ。あたしも、触っていい?」
「……ん。」
「うわぁ。髪の毛ふわふわ!肌もちもち~!」
「……」
「いいなぁ。」
「……」
「神崎さん、アリサとアリスって何だか似てるよね!」
「……うん。」
「あたし今ね、生まれて初めてこの名前で良かったと思ってる。神崎さんが、大好きだから。」
「っ……ぅ、んっ……」
「だから泣かないで?」
そう言って彼女は私の涙を拭った。
そして今までにないくらいの優しい声色と瞳で私を見た。
「……ありがとう。」
「……ッ!ごめっ……ごめんねぇっ……!!あたしっ……恐かったのッ!またあんな地獄の日々が戻ること……!ホントは助けたかった……ッ!だけどっ足が……頭が……真っ白でっ……!!!」
「うん。わかってる。大丈夫だよー!だから、ね?笑った顔、見せてよ……」
そして顔をそっと持ち上げられ、私は唇を重ねられた。
驚いたけれど、何処か安心できた。
触れあう所から、彼女の体温が、鼓動が伝わって……胸を温かくする。
これがもしも、恋ならばきっと……他の人に軽蔑されるかもしれない。
「……んっ。好きだよ……?」
「……うん。私も。」
だけどそれ以上に、彼女が大切だと思える。
残り少ない時間でも精一杯共に生きていきたい。
彼女を守れる……そんな強者に私はなりたい。
愛しい肌が、それを教えてくれた。