泥酔ドクター拾いました。
「今回のこと、今度何かお礼させてくださいね」

沈黙を破ったのは、少しだけ恥ずかしそうな表情のままの藤代さん。

「お礼なんて別にしなくていいよ。それより、同じマンションに住んでいるんだから、何か困ったことがあったらいつでも頼っていいから」

「ありがとうございます。でも、今回のことはお礼はさせてもらわないと気がすまないから」

藤代さんはそう言って、にっこりと笑ってみせる。


「じゃあ、今度、2人で食事でもどう?俺、おいしそうな店見つけたんだけど一人では入りにくい雰囲気だから、一緒についてきてくれないかな?」

思い付きでの食事、いや、デートの誘い。
きっと断られると思っていたというのに、彼女ははにかんだ笑顔を見せて頷いてくれた。

「もちろんです。あの、じゃあ、帰りますね。」

「うん。お大事に」

心の中でガッツポーズを決めながら俺は、彼女の背中を見送った。
昨日、あんなに小さくて縮こまって見えた彼女の背中は、いつの間にかいつものようにシャンと背筋の伸びた凛とした姿勢に戻っていた。
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