泥酔ドクター拾いました。
ふと、頭にさっきまで一緒に居た藤代さんの笑顔が浮かんでくる。

いや、だめだ。彼女を巻き込んではいけない。
違う。巻き込みたくなんてない。


そう思うけれど、追い詰められてしまうと他に考えられるいいアイデアなんて全くと言っていい程思い浮かんでこない。

自分の心で葛藤を重ねている間に、時間は一刻一刻と過ぎていく。

残り５分となった頃、俺は心を決めて玄関を出て、階段を下り、彼女—-藤代さんの部屋の前に居た。


震えそうになる指先に力を込めて、ゆっくりとインターホンを鳴らす。

さっき、『明日までゆっくりする』と言っていた藤代さんが部屋にいることは分かっているというのに、心のどこかで出ないで欲しいと願っている。


それは彼女が、同じ職場で、同じマンションで。
俺の中で、少なくとも今一番、こんなみっともない状況を見せたくない相手だからということは間違いない。


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