泥酔ドクター拾いました。
「嘘ばっかり……」

大きなため息とともに、美樹が私を小さく睨んだから私は肩を竦めた。

「奈緒は好きなんじゃないの?大和田先生のこと」

「ううん、もういいや」

美樹の質問に私は小さく首を横に振ると、視線を外にうつした。

外は雨。色とりどりの傘を差した通行人が、向こうに見える交差点を足早に歩いている姿をぼんやりと眺める。


あの日も雨だったな。


ふと、大和田先生の家に泊まったあの時のことが鮮明に思い出されてしまった。

「もういいって、何それ」

呆れたような美樹の一言で私は反らしていた視線をもう一度、美樹に戻す。

< 152 / 225 >

この作品をシェア

pagetop