泥酔ドクター拾いました。
「実は先ほど、斎藤さんの今後についてカンファレンスがあったんですよ。」

先ほどまで私向けられていた真っすぐな斎藤さんの視線が、大和田先生へと移される。
斎藤さんが大きく息を飲むのが分かった。


「毎日、リハビリに励まれているとリハビリスタッフから報告がありました。なんでも、病室や病棟の廊下で自主訓練もされているとか?」

「えぇ、ま、まぁ」


「その効果もあって、リハビリは順調そのものということですね。骨折の痛み、随分減ってきたんじゃないですか?」


癌の進行が早くて医療用麻薬を追加して痛みを緩和しているからって、さっきのカンファレンスで薬剤部から報告があったんだった。



「そ、そうですね」

戸惑いながら返事をする斎藤さんは、それが薬の効果だってことはもちろん知らない。だけど主治医の大和田先生から褒められてさっきまでの深刻な眼差しは少しだけ和らいで、なんだか照れ臭そうだ。
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