泥酔ドクター拾いました。
パソコンをシャットダウンする間も藤代さんのことが心配でたまらない。


帰り支度を整えて、夜中の薄暗いナースステーションを覗いてみると、彼女を姿を見つけることは出来なかった。


「藤代さんなら、ついさっき帰りましたよ」

深夜勤務のスタッフが妙に理解したような笑顔で俺に伝えるから、居心地が悪い。

帰ったのか…。

彼女のことを想いながら帰り道を急ぐ。まだ帰ってそんなに時間が経っていないならあの雨の日と同じようにどこかで追いつくかもしれない。

帰り着く先は同じなのだから。

俺はマンションまでの道のりを急いで帰ったというのに、彼女の姿を見つけることは出来ず、藤代さんの唯一の移動手段であるはずの自転車も駐輪場に停まっては居なかった。

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