泥酔ドクター拾いました。
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看護主任から藤代さんの退職願の話を聞いた後、何度か病棟で藤代さんの姿を見かけたけれど、彼女はいつも忙しそうに働いていて、話しかける隙なんて無かった。


いつものように真っすぐにシャンと伸びた背筋。
患者さんには穏やかな笑顔で話しかけ、小柄の体格なのに堂々としていることもあって、実際よりも大きく感じる。

何より、彼女はこの仕事が好きなのだろうな、と彼女の背中からなんとなく感じ取ることが出来る。


日勤の時間帯を過ぎて、彼女の姿を探したけれど見当たらない。


あぁ、きっとあの場所かもしれない。

確信にも近い気持ちで、俺は自販機で缶コーヒーを2つ買って屋上へ続く階段を駆け上がった。
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