泥酔ドクター拾いました。
屋上の重たい扉をゆっくり開くと、すっかり日没の時間を過ぎてしまった薄暗い空の下にベンチに佇む人影が見える。


いつも真っすぐに伸びた背筋のおかげで、俺は探していた彼女だとすぐに分かった。


「お疲れ」

ほのかと対峙してしまったあの夜以来、気まずいままだったこともあり、しばらく彼女の背中を眺めたままだった。
けれど、大きく深呼吸をして藤代さんの背中に声をかけると、思った以上に大きな声が出てしまう。

しかも、若干声も上擦ってしまい、なんだか恥ずかしさすら覚えてしまう。


「きゃっ」
藤代さんは、急に声をかけられてたことに驚いた様子で小さく声をあげながら肩を竦めるようにびくりとした。

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