泥酔ドクター拾いました。
「お疲れ」

「…お疲れ様です」


心臓の音が聞こえるほどに彼女を意識しているというのに、俺は落ち着きを払ったふりをしてもう一度声をかけながら、彼女の座っているベンチの隣にそそくさと腰を下ろす。

藤代さんも俺の行動に一瞬戸惑っている様子を見せたものの、挨拶の返事を返しながら俺が座るスペースを確保してくれるかのように少しだけ隣に移動する。

いつもと変わらない様子だというのに、どこか行動がよそよそしい気がする。


「これ…」

ついさっき買ったコーヒーを手渡そうと、藤代さんの横顔を覗くとものすごく困った様な顔していて、彼女の手元に視線を移す。
するとそこには全く同じ缶コーヒーがプルタブを開けられた状態で両手で包み込むように持たれていた。
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