泥酔ドクター拾いました。
「あっ、ごめん」

なんだか空回りばかりで、かっこ悪い。

だけど、彼女は小さく肩を震わせている。

「いえ、お気遣いありがとうございます。有難く頂きます」

どこか他人行儀の挨拶だけれど、彼女の笑顔は作られたものではなく自然に零れている笑顔で、俺の緊張感を一気にほぐしてくれる。

俺は自分のために買ったコーヒーの一口だけ喉に流しいれ、空に向かって息を吐く。

暖かなコーヒーが、夜風で寒さすら感じる身体を温めるように体内を流れていくのがわかる。
口から出る白い息は、やけに白ささえ感じる。

隣に座る藤代さんも、俺の動きに合わせるようにして大きく空に向かって息を吐きだす。


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