泥酔ドクター拾いました。
「……どうかした?」

大和田先生の言葉にハッと我に返る。

どうやら先生の横顔をぼんやり眺めすぎてしまったよう。本当は横顔というより唇なんだけど。

「どこに行くんですか?私、明日も仕事なんですけど…」

頬を膨らませて、不機嫌な振りをしてその場を凌ぐような質問をする。

「大丈夫、藤代さんの家まで送るから。」

大和田先生は私の質問に楽しそうに肩を揺らす。

「送るって、大和田先生、私とマンション同じじゃないですか」
「知ってる」

屋上の時の真剣な顔なんて別人みたい。
大和田先生の表情は柔らかくて、優しくて、私の胸を弾ませる。

「もう……」
不機嫌な振りなんて出来そうになくて私は前を見て、頬を膨らませるのが精いっぱいだった。



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