泥酔ドクター拾いました。
体調不良だったってことも忘れて、部屋を飛び出して逃げ込んだのは独身寮の美樹の部屋だった。


さんざん泣いて、気持ちが少しだけ落ち着いてから、マンションに帰ってみたけれど、彼は居なかった。
そして、その日以来、私と暮らした部屋には帰ってこなくなった。

どうやら私が仕事で留守の時間を見計らって、着替えなどを取りに来たりしていたようだけれど、私はあの日から彼とは一度も会うことなんてなかった。


本当は仕事どころじゃなかったけれど、そんなこと生活のためには言ってられなくて、白衣を着て貼り付けたような笑顔を浮かべて、毎日気合いで仕事を乗り切っていた。

けれど、彼と一緒に生活していた部屋で生活を送ることなんて出来なくて、その空間にいるだけで、気持ち悪さと侘しさがこみ上げてきた。


しばらく美樹の部屋を間借りしていたのだけれど、彼に電話で別れを告げられた後、不動産を何軒か巡り、今のマンションに辿り着いたのだった。



それなのに、まさかそのマンションで泥酔男にキスされるなんて思わなかった。
ようやく新しい恋愛をしたいなんて思っていたのに。


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