泥酔ドクター拾いました。
「で、でも。こんな面談室で採血しなくても。ナースステーションでもよかったじゃないですか」


意識してしまったら、小さな面談室に二人きりという状況も緊張が増してしまう要因の一つのような気がしてくる。

私はそんなこと気が付かれたくなくて、唇を尖らせて呟く。

「藤代さん、知ってる？俺を採血したいナース結構多いんだよ。」

「そうでしょうね。惚れ惚れするほどの素敵な血管ですもんね」

採血用の翼状針を大和田先生の二の腕に刺しながら、本当に採血の練習にはもってこいの二の腕だと感心する。


「いやいや、そういう意味じゃなくてさ。藤代さんがこうやって採血しているところ見つかったら、何言われるかわからないよ。ほら、あの主任とか」

そうだった。大和田先生は患者さんだけじゃなくて、スタッフにだって人気なんだ。
歓迎会の時だって、主任が大和田先生の隣を譲らなかったって誰かが言ってたっけ。

私は思わず、主任のものすごく不機嫌な顔を思い浮かべて肩を竦めた。

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