泥酔ドクター拾いました。
「じゃ、じゃあ。私はこれで失礼します」

2人きりの空間を飛び出すように、面談室から一刻も早く出ようと思っていたのに。

「藤代さん、待って」

大和田先生は、そんな私を押し留めた。

「本当は、2人きりになりたかったんだ」
私の背中にぶつけられた言葉は、私の心拍数を急加速させるには十分すぎるほどだった。

「藤代さん、俺のこと避けてるだろ?」

「避けてなんていませんよ」

バレてたんだ。
そう思ったものの、急激に加速した心拍数のことだって、バレバレの嘘だって気づかれたくはなくて、背中越しに答える。

今、振り向いたら大和田先生の顔を見ることなんてできないって思ったから。

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