泥酔ドクター拾いました。
「悪かったな」

彼女の見上げていた空を俺も同じように見上げると、小さな星がいくつも瞬いている。

そんな俺の横顔を彼女が眺めていることに気づくまで、そんなに時間はかからなかった。
「どうして、謝るんですか?」

不思議そうな顔している彼女を見つめると、視線がかち合ってしまう。


「今夜、深夜勤務のシフトなんだって?俺が採血なんて頼んだせいで、帰れなくなってしまったな」

「いえ、こんなことは時々あるから気にしないでください。どうせ帰っても、今夜は眠れなかったと思うから」

肩を竦めて笑って見せた彼女の横顔はやはり悲しさが含まれていて、あまりにも儚げだった。
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