泥酔ドクター拾いました。
「よく考えたらさ、あの最低最悪の泥酔男とのキスだって、泥酔男の正体は大和田先生なんだし、最低最悪のキスじゃなくなったね」

キス。その言葉に私は顔が熱を帯びるのを意識せずにはいられない。
よく考えたら、大和田先生とキスしたってことになるわけだし。

前はあんなにあのキスのことを思い返すと、怒りがこみ上げていたというのに、今思い返すと、怒りなんてこみ上げてくることはなく、代わりに胸の鼓動が大きく拍動しているのを感じるだけだ。


「あの時は…」

照れ隠しの言い訳を淡々と述べようとしていたというのに。

「藤代さん、高月さん。休憩中悪いけど、緊急オペが入ったから手伝って」
休憩室をノックもせずに、急いだ様子で飛び込んできた主任に私たちは急いで立ち上がると、戦闘モードに切り替えて、仕事へと戻っていったのだった。

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