キミの螺旋
部屋の前に誰かがいるな…とは思った。

遠くからその人物を見ても、それが誰だかはわからずに

あたしは無防備で近づいて行った。


「凛!」


その人物は、あたしを見つけ、名前を呼んだ。

その呼び方
…声…


あたしは背筋に冷たいモノが走ったような気がして…その場に立ちすくんだ。






「お…お父さん…!」


「凛!探したんだぞ!どうして家出なんか…」

「なんで…なんでココがわかったの?」

「学校の友達から『偶然会ったんです』って連絡があってな!」

「学校の…友達?」



─井上!?


アイツしかいない!
ハルトに聞けば、ここの住所はわかるもの…!

なんで、そんな事をしたかわかんないけど

今、そんな事を考えてる余裕はない。

逃げたいのに…

まるで見えない鎖に繋がれた犬みたいに

あたしは動けずにいた。

「ここじゃうるさいな。中で話しをしよう。凛、開けてくれないか?」

「…」

そう言われて、素直に父親を部屋へと上げた。

逆らう事もできない…


居間へと足を踏み入れた時


父親に…多分、血の繋がっていない育ての親に──








あたしはキスをされた


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