キミの螺旋
ある日、目覚めると
そこは見た事もない白い天井。堅いベッドの上。

そこが病院だという事に気付くのに時間はかからなかった。

どうしてそこにいるのかわからない。


しかも自分が〈誰〉だかわからない。

何も思い出せない。
自分の家族も
自分の名前すらも

生きる為に必要な事は全てわかるのに
自分の事だけは知らない…

何故、あたしは記憶をなくしたのか
聞いても誰も教えてくれなかった。

その事にどんな意味があるのかも知らず…

不安で…毎日どうしていいかわからない時に

《彼ら》はあたしを訪ねてきた。

《親戚》だという夫妻。義母があたしに縁のある人らしい。

あたしは彼らに引き取られ世話になった。



ポッカリと空いたあたしの空白の時間を埋めるために
彼らは優しかった。

子供がいなかったせいもあると思う。


10歳から家族として暮らしていて、ホントの親みたいだと思ってた。

そのまま生きられたなら…記憶なんて戻らなくても平気だと思うくらいに
たとえ血の繋がりなんかなくても

あたしには大事な唯一家族と呼べるものだった。



やがて高校生になった春─

その生活に異変が起きた。
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