キミの螺旋
「きゃ…っ…」


人の骨が折れる音なんて聞いた事ない。

それでも確かに
父親の腕はおかしな方向に曲がっていた。


「う…うわぁぁぁ!俺の…俺の腕が…!」

「これくらいじゃ足りないぜ?女に乱暴しやがって!」

「…藤…」


これがあの藤紀?


何の躊躇いもなく
冷静に人の腕を折る
そんな事ができる人なの…?


少し…怖く思えた。



そして父親は怒りに震え顔を真っ赤にしていた。

「き…貴様…こんな事してどうなるかわかってんのか!?」

「もちろん。貴方もどうなるかわかってますよね!」

「ふざけんな!ガキがぁ!!」

「あれっ?もう片方の腕も折られたいの?」

「やめ…止めて!藤紀…もういい!もう止めて!!」

藤紀の…あまりの冷静さにあたしは怖くなり思わず止めていた。

「!…凛…」

あたしの止める声に藤紀はハッとしたみたいだった。

「…治療費は払いますよ。ここへ─請求してください」

そう言って藤紀は名刺を取り出した。
多分…親の会社の名刺かなって思った。

父親は名刺を受け取るのを拒否し
藤紀を睨み続けていた。

憎しみのこもった眼をさせて…低い声で言った。

「覚えてろよ…」
< 172 / 398 >

この作品をシェア

pagetop