キミの螺旋
父親のそんな言葉に
藤紀は冷ややかな視線を投げつけ

そのまま視線を反らしあたしの方に寄ってきた。

「帰ろう…立てるか?」

「ゴメ…ン…立てない…かも…」

まだあたしの身体は震えていて
力が入らなかった。

それを見て藤紀はあたしに大きめのバスタオルを掛けてくれて

あたしを抱きあげた。


あたしは思わず藤紀にしがみつく。


父親が…何か言ってたかもしれないけど
今のあたしには聞こえなかった。

そのまま藤紀はあたしを連れて部屋を出た。


父親が追いかけてきそうで怖くて
あたしは目をつぶり、藤紀に抱きついていた。


しばらく歩いたと思う

藤紀は気まずそうに言った。

「凛…ちょっと降ろすよ?」

「…うん」

「ゴメンな?腕、シビレちゃったよ!」

その言葉にあたしは少し笑ってしまった。

そして藤紀は後ろを向き、しゃがみこんだ。

「ほら、おんぶにするから」

「ゴメンね…ありがとう」


夜で良かった。
深夜だし…人と会わないから、今のあたしを見られる事もない。


藤紀に抱きついてるあたしを誰かに見られる事もない…


藤紀の広い背中に抱きつきながら

あたしはホッとして泣いていた…
< 173 / 398 >

この作品をシェア

pagetop