キミの螺旋
まもなく父親が来た。

会社社長らしく運転手付きの高級車に乗ってきた。

「待たせたな」

「こんな所に高級車なんか乗ってきて平気なのか?誰かに見られるとマズイんじゃないの」

別に父親の心配したワケではなかったが、ちょっと気になって言った。

でも父親は気にしないって感じで

「ヤクザの親分が出所するとでも思うだろ?むしろこの方がいいかもしれんぞ」

「…!アッハハハ!その通りかもしれない」

上手い返しに思わず笑ってしまった。

機転がきく人なのかもしれない。
まぁ、こういう臨機応変に対応できる人だから会社なんて経営してられるんだろうな。

車に乗り込もうとして、おれは山本先生に『一応』挨拶らしきものをした。

「お世話になりました」

「なーに言ってんだ。毎月会うのに改まって…」

「そういう時は先生『もう帰ってくるなよ』とか言わない?雰囲気出ねーなー」

「バーカ!ちゃんとやれよ?」

冗談らしく軽い返事をしたかと思ったら…
山本先生は声のトーンを落としてさらに続けた。

「…お前はどこにも逃げられないんだからな」

「…わかってるよ」

心臓の上に埋め込まれたGPS

それは見えない鎖だった…。
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