キミの螺旋
オレがあの夫婦を殺した事は悪いとは思わないけど、人を利用したり騙したりは…ムリだと思う。

そういう意味での悪人にはなれない…

だからきっと…ある程度学校には行かせてもらって、それなりの資格や地位を得て
この親父の跡を継ぐ事になるだろう。

オレにとっては…多分、恩人で
この家族にとっては息子への罪滅ぼしになるなら…

それぞれの利害が一致している。

オレは降参したって感じで両手を上げ父親に言った。

「…わかった。父さんの希望を聞くよ。とりあえず大学に行かせてくれ」

「商談成立─だな」

父親もホッとした表情をみせた。
それから腕時計をチラッと見て

「社に戻る。何か聞きたい事があったら電話しろ」

そう言って玄関へと向かった。

「なぁ!か…母さんは…?」

「…まだ入院してるよ。見舞いに行くといい。乗っていくか?」

「いや…今度にする」

「そうか。そうだな」

そう言うと父親は部屋を出て行った。


一人になって改めて部屋を見回す。
生活に必要なモノ以上にそろっている。

ソファに大画面テレビ

パソコンに何故かワインセラー…

親父の趣味か?

あとは
寝室には高そうなベッドがあった。
< 192 / 398 >

この作品をシェア

pagetop