キミの螺旋
「凛…大丈夫か?」

「ん…っ…」

むせるほど泣いていたあたしを藤紀が気使ってくれた。

「まだ熱があるんだから寝てなきゃ」

「ヤダ…藤紀…行かないで…」

「大丈夫。隣にいるから」

そう言ってまた、あたしの手を握ってくれてた。
それでも離れたくなくて…ずっと目を閉じる事ができなかった。

藤紀が視界から消えたら…また会えないような気がして怖かった。

怖いの…

それに
サラを裏切った気がする

何て言えばいいの?

やっと藤紀と気持ちが通じ合ったのに──怖くて言えない。

でも言わなきゃ
ホントはあたしも藤紀が好きなんだって正直に言わなきゃ

もっと裏切る事になる

もうあんな…血の海の中に倒れてるサラなんか見たくない…

だけど熱と薬で
まともに考える事すらできなかった。

「サラぁ…ゴメン…ゴメンね…ゴメン…ね」

うわ言みたいに繰り返し呟いた。

サラに伝わらなくてもいいから
今すぐに謝りたい…
そう思った。


高熱と監禁疲れと
好きな人とのキス


それがきっかけだったのかはわからないけれど…


あたしはその晩

事件当日以外の10歳までの全ての記憶を取り戻した…
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