キミの螺旋
あたしが想像していたよりも

   『ストン』

…って。

抜け落ちて、ずっと探して歩いた記憶は何の違和感も衝撃もなく

あたしの中に落ちてきた。

何だ…こんな所に『あたし』は隠れていた。

それくらいに思った。

あたしの10年間分の記憶…魂の記録

何処かに落としたんじゃなくて、確かにあたしの中にあったんだけど探せないでいた…そんな感覚。

だけどいきなり10歳の記憶が甦って…しばらくの時間、混乱した。

自分の今の名前や年齢、今の状況なんかも子供の頃の記憶と混ざりあうの

『あたし…藤堂 凛…17歳…』

でも本当の名前は
《有馬 凛…》

事件の事だけは思い出せない
多分それには理由があるんだと思った。

思い出したくない理由

両親が殺される理由もあたしの子供の頃の記憶の中に思いあたる理由もない。


でも、もう居ない…

やっと思い出せたのにあの大好きだった両親は居ない…

お義父さんに聞かされた時は実感とか持てなかったけど
今はわかる。

後で事件の事、調べよう

あたしの中に少しの憎しみと、両親への想いに胸が苦しくなっていく。

まだ空が白み始めた早朝…あたしは病室で独り泣いていた…。
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