キミの螺旋
ハルトの今の状態…とりあえず生きててくれて良かったと思う…

多分…あたしはそう思ってる

でも─変な感じがした。

あのままサラが来なければ、あたしはハルトと心中してた。

命のやり取りをした相手…かつて愛した人がこれからどうなってしまうのか…あたしは少し怖かった。

でも…もう忘れよう…

これからの事を考えよう。

望みが一つ叶ったんだ…記憶を取り戻す事。それが大事だったはずだ。

だけど、その夜は眠れなかった。





翌日、サラと藤紀が迎えに来てくれて、あたしは無事に退院した。

少し安心した。

夜になっても淋しくない。壁の向こうにはサラも藤紀だっている…

記憶を取り戻して数日…あたしは不思議な感覚に襲われていた。

『淋しい』って感情が溢れてどうにもならない…

あたしは本当は天涯孤独な身の上だから

だけどね、思い出して良かったって事の方が多いよね?
娘に忘れられてたなんて、パパとママが可哀想だったし。

早く調べて、お墓参りとかに行きたいとも思った。
淋しさの代わりに思い出が増える…ある意味、幸福だった。


あたしの
この最大の望みが叶った事を


のちに一生後悔し続けるとは知らずに…
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