キミの螺旋
…怖い事があったんだね…

あたしはとっさにそう思った。
不思議と胸のドキドキが収まって、藤紀が大事な宝物みたいな感覚になって…

あたしも藤紀をギュッと抱きしめた。

守ってあげられたらいいのに

ずっとそばにいて
藤紀に寂しい思いなんかさせたくないのに…

どうしてこんなに傷ついてるの?

「あたしじゃダメ?あたしなら…ずっと藤紀を愛するし、藤紀を独りになんかしないよ…」

拒否されるとわかっているのに言わずにはいられなかった。

藤紀はずっと黙っていて…やがて答えた。

「オレに…どんな過去があったとしても平気?」

声の震えで…彼が泣いてるのがわかった。

あたしは藤紀の頬に触れ…涙が流れてる場所にキスした。

「あたしだって…ヒドイ過去があるよ?でも、いつだって大事なのは'今'だって思いたい。

ねぇ藤紀?

あたしは'今'の藤紀が、目の前にいる藤紀が好きなんだ…」

いきなり過去の藤紀があたしの目の前に現れたりしない

出会うのはいつでも未来の藤紀。出会った事のない藤紀。
一秒前とは違う、少し進化した彼


だから逢うたびに恋をする


逢うたびに
あたしの中で新しく《好き》って感情が生まれるの…
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