キミの螺旋
「言わなくていいよ」

あたしは人差し指を藤紀の唇へ押し当て、彼の言葉を遮った。

「言ったでしょ?今の藤紀が好きだって。過去を知ったからって何か変わる?」

「でも…後悔するかもしれないだろ?」

「知らなければ後悔する事もないよ。それとも未来に影響するような過去なの?」

「わからない…どうなるかなんて。だけど凛を傷つけたくない」

「あたしは…例え藤紀にどんな過去があったとしても受け止めるからね?でも今は言わなくていいよ」

「どうして?」

「藤紀が辛そうだから。そんなにツラい過去なら言わなくていいよ。いつか機会があったら…それでいいじゃん」

「ゴメン…オレは凛に助けてもらってばかりだな…」

「逆だよ!あたしの方が助けてもらってる」

そう言って、あたしは彼にキスをした。

「好き…今はそれだけでいいの」

「凛…オレも好きだよ…今までゴメンな…」

あたし達はまた長いキスをした。


ホントはね
過去を知って彼の見方が変わるなんてイヤなの。そんな恋はしたくない。

藤紀を信じたいから

彼を好きになった事を後悔したくないから

逃げなんかじゃない
この恋を守りたいだけ

藤紀…好きだよ…
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