キミの螺旋
母親は涙を流した。

「ありがとう…凛。幸せに…幸せになるのよ」

「元気でね、お母さん」

あたし達は握手をして別れた。

やっと…家から出られた気がした。

これからなんだ。
今からまた新しい生活が始まるような気分になった。

親子と呼ぶには、あまりにも難しい関係だった。けど…お母さんには恩がある。

記憶がないあたしを優しく育ててくれた。
あんな事がなければ本当の親子になれたのかもしれない。

彼女なりにあたしを愛してくれてた事を知ってるし…彼女もそれを望んでいた。

でも、こんなあたし…どう接していいのか悩んだと思う。だから家出しても、それほど怒れなかったし引き止める事もしなかった…出来なかった。

ゴメンね…
多分あたしが彼女を苦しませた。

本当のお母さんみたいだったよ。


彼女には幸せになって欲しかった。
あんな男と…ホントは別れてほしいくらいだったけど。そこまで彼女の選んだ人生に立ち入れない。

あたしは何度も何度も振り返り、いつまでも手を振る母親の姿を探して

───泣いた…




そして


あたしの人生の中で、あたし達母子が会う事は二度となかった…
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