キミの螺旋
ドキドキした…



オトコが泣いてるのを見たのは初めてだからだった。

声を殺し、肩を震わせて静かに涙を流す姿に…あたしは釘付けになってしまった。


「ね…どうしたの」


気付くと声をかけてしまっていた。

男性は涙を拭いながら振り向き、あたしを見て言った。

「…あ、あれっ?夕方ぶつかった子だよね?」

「…!」

あたしはうなずいた。
顔、覚えてたの?
あんな一瞬の出来事だったのに…

あたしはその時初めて彼の顔をちゃんと見た。
…ちょっとジャニ系の人…かなって思った。

すっかり涙目になってる彼は恥ずかしそうに言った。

「…へんなトコ見られちゃったな…」

「何か…あったの?」

「ハハ…情けない話だよ?今日、彼女の誕生日だったんだけど…デートに遅れて待ち合わせ場所に行ったら、怒って帰ってて…仕方ないから家に行ってみたら他のオトコとえっちしてたみたいなんだ…」

「…えぇ!?き…聞いちゃったの?」

「マンションの廊下にヨガリ声が漏れてんだぜ?…よく聞いてたあの声が。しかも俺としてるトキよか激しそうだし…俺、色んな意味でショックでさ…」

「…ヒドイ話…!ねぇ、あたしと遊びに行かない?」
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