キミの螺旋
「待って…待ってよ!」

あたしは声に出してハッキリと彼を呼び止めていた。
でも藤紀は一瞬、立ち止まり…また歩き出した。

あたしは迷った…

今、引き留めなければ話しをする事も…二度と会う事もないかもしれない。
二度とチャンスは訪れないかもしれない。

だけど
会ってどうするっていうの?

憎しみが増幅されるだけかもしれないよ?

だけど、考えてるヒマなんかない!
あたしは大声で藤紀を呼んだ。


「待ちなさいよ!!藤紀!聞こえてるんでしょ!?ムシするのは卑怯だよ!」


周りの人達があたしを振り返る。

きっと彼らの目にはケンカでもしたカップルくらいに映っていただろう。
確かに、そういう状況だったなら恥ずかしかったと思う。

でも今は気にならなかった。

自分の事だけで精一杯で、藤紀だけを見ていたから…

藤紀は諦めたように背中でため息をつき振り返って、あたしの方へと小走りで近寄ってきた。

そして、あたしの腕を掴み、どこかへ引っ張っていった。

誰かに聞かれたらヤバい事くらい、あたしだってわかってる。

しばらく歩き人通りも少なくなった時、公園が目に入った。

もう夕方だし…姿を見られる心配はなかった。
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